■9 《真side》 『不意に交わるお昼休み』
作:校條 春
「クオンさん!?」
学校のお昼休み。ヒカリが購買部を訪れると、そこでばったりクオンと出くわした。
「ヒカリちゃん? 珍しいね、いつもはアキナのお弁当――」
クオンは言いかけて、すぐに納得する。
「ああそうか。アキナが珍しく寝坊してお弁当がないんだよね。こっちと事情は同じだ」
「え?」
「僕もお昼買いに来たんだ。購買組でじゃんけんして負けちゃったから、アキナとケントの分も」
「なんか、うちの兄がすみません……」
「気にしないで、こういうのってその場のノリだからさ。言い出したのはケントだけど、アキナも僕もそれに乗っかったんだから自業自得ってやつだよ。スオウだけ自分のお弁当黙々と食べてて我関せずって感じだったけど」
クオンは教室でのやり取りを思い出し、つい笑ってしまう。
「ヒカリちゃんは最近どう? 高校生活楽しい?」
「そりゃあもう! なんたって私、超健康ですから! 体育を一人見てるだけだったり、学校休み続けて皆と話が合わなくなったり、倒れて自分だけ行事に参加できなくなったりしない! 何の心配もなく学校に行けるだけで最高って感じ!」
どや顔で語るには重い内容にクオンは苦笑する。
「いやヒカリちゃん、それどう反応すればいいかわからないよ」
「え、最近の持ちネタなんだけど」
「それを持ち出される友達は大変だよ」
「そうなの!? 面白いと思ったのに……まぁ、なんか微妙な空気になるなとは感じてたんだよね……」
「感じてたんだ」
しゅんとするヒカリ、すぐに顔を上げて闘志を燃やす。
「次は別のネタを考えなきゃ!」
クオンはそんなヒカリの様子見見て、少し考える。
「……ヒカリちゃん、なにか焦ってる?」
「え!? そう見える?」
「ちょっとね」
ヒカリは少し話しづらそうに、打ち明ける。
「クラスの皆と早く仲良くなりたいとは、思ってるかも」
クオンはヒカリの気持ちが少しだけ理解できた。理由は違えど、クオンも他人から良く思われるようにと、自分を作ってきた経験があったからだ。
「そっか。でも無理に頑張る必要なんてないよ。無理をしても、そこは居心地のいい場所にはならない。きっとみんな、そのままのヒカリちゃんを好きになってくれるよ」
「……そうかな」
「うん。僕もそのままのヒカリちゃんが好きだよ」
「!」
屈託のない、純度100%の笑顔。
ヒカリもその笑顔に後押しされるように、自然な笑顔を見せる。
「……うん。そうしてみる!」
「それがいいよ」
クオン、そこでふと、あることを思い出す。
「あ、そうだ。ヒカリちゃん、今日スオウのファイト欲がすごくてさ。明日休みだし、アキナの家に泊りでファイト会やろう、みたいな流れになってるんだけど、大丈夫かな?」
「今日!?」
「ごめんね、今朝そういうかんじになっちゃって。嫌なら僕から言っておくから遠慮せず――」
クオンが言い終わる前に、ヒカリの声が被さる。
「大丈夫!」
「いいの?」
「うん! むしろ、私も混ざっていい!?」
「それはもちろん」
「やったー! レヴィドラス、今日こそ攻略するから」
「受けて立つよ。手加減はできないからね」
「よーし、早速デッキ考えなきゃ!」
「ちょ、ヒカリちゃんまだお昼買ってないよ!」
勢いよく走り出したヒカリをクオンが追いかける。
その後、アキナとケントにお昼ごはんが届いたのは、昼休みが終わるぎりぎりのことだった。
