Short Story

ショートストーリー

■7 《真side》 『ある日の師弟』

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作:校條 春

「ねぇカゲ君」
「なんだ?」
「人生って、むずかしいね」
「どうした急に」
 ナオは夕焼け空を見上げながら、河川敷を歩いていた。
 今日もカゲツに挑み、ぼこぼこにされた帰りである。
「いやね、ここまでがむしゃらに突っ走ってきたけど、いろいろ置き去りにしてきたことがあるなぁと思ってるわけよ、黄昏時のナオさんは」
「感傷的になるみたいな?」
「序盤にライドコストで切ったカードをふと思いだした的な」
「思ってた以上にファイターな考え方だな、黄昏時のナオさん」
「染みついてるもんで」
「英才教育の賜物だ」
「誰に教育されたと思う?」
「さぁ」
「おにぎりの具を入れる時は?」
「ソウルチャージ」
「寝る前に歯磨き忘れた時は?」
「ターンエンド時の処理忘れ」
「誰に教育されたと思う?」
「さぁ」
「今とぼけてる誰かさんだよ」
「ひでぇなそいつ」
 冗談も一区切りし、ふふ、と二人から小さな笑いが漏れる。
 ナオ、空に向かってぐーっと腕を伸ばす。
「まぁそれは置いといて。念願だったプロ資格も得てさ、心にも余裕が出てきたんだろうね。今まで脇にどけてたものが急に気になってきちゃったんだよ」
「話したい範囲で聞いてやるぞ」
「全部は聞かなくていいんだ?」
「いいよ。ってか、全部話したくないから濁してんだろ?」
「バレたか」
「そりゃバレる」
 少し気が軽くなったのか、ナオはゆっくりと話し出す。
 その口調は、あくまで明るかった。
「私、家族とうまくいってないんだよ」
「そういや、ナオちゃんから家のこととか全然聞かなかったな」
「話したくないの、いろいろあって」
「そっか」
「それでね、将来のことも見えてきたし、もう一度向き合う頃なのかと思ったんだよね」
 次の瞬間、ナオは大げさに頭を抱えた。
「だけどぉ~! どう話せばいいのかとか、どの面下げてみたいなのとか、不安要素がたまりにたまっちゃってぇ~! 人生って積み重ねたものがちゃんと返ってくるんだね……」
「自業自得ってやつだ」
「それは言い過ぎですぅ」
「ま、なら俺から言えることは一つだけだな」
「なに?」
「会って話せ。以上」
 カゲツのきっぱりとした物言いに、ナオは抗議する。
「だからそれが難しいって言ってるんでしょー! 悩める乙女の話聞いてた!?」
「聞いてたよ。でも、悩むだけ無駄だぞ」
「くぅ~、そうだったコイツはそういうやつだった」
「どういうやつだよ」
「朴念仁! 唐変木! あほったれ!」
「え、すごい罵倒」

 賑やかな帰り道。今日も夕日は沈んでいく。

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