■5 《真side》 『火花散るお祭り』
作:校條 春
「あなた、なんでいるの?」
「はぁ? それはこっちのセリフなんですけど」
にらみ合うのは、エリカとヒカリ。
鋭い視線の間で、火花が散っているようである。
その横でどうどうとなだめるのはアキナ。
「なぁ、もう少し仲良くとかは」
「「無理」」
どうしてこうなったか。
ことは一日前に遡る。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんこれ見て!」
アキナの部屋に突撃してきたヒカリが、チラシを突きつける。
「いやノックぐらいしろって……お祭り?」
「懐かしくない? これ昔行ったことあるよね」
「ああ、確か父さんが連れてってくれた」
「そうそう! 行こうよ、私もう元気だしさ」
「いいな、行くか!」
「うん! 絶対だよ!」
そして、アキナはせっかくならとエリカにも連絡を取り、『いくいくいく!』とハイテンションな返事をもらったのだが、二人に互いが来ることを伝え忘れ、今に至る。
「ぐるるるるるる」
「がるるるるるる」
エリカとヒカリは、基本的に仲が悪い。アキナも無理に仲良くさせようとはしていないが、今回ばかりは自分のミスということもあり、冷や汗をかいていた。
「勝負だよ」
「受けて立つ」
「勝負……?」
どういうことだ? と疑問を浮かべるアキナだったが、その意味をこの後知ることとなる。
「おりゃあああああ!」
「だりゃあああああ!」
水ヨーヨー釣り。
あっけにとられているアキナが見守る先で、エリカとヒカリが次々に水ヨーヨーを釣り上げる。激しい攻防の末、今回はヒカリの勝利となった。
「ま、こんなもんよ。年取って鈍くなったんじゃないの?」
「このクソガキ……次!」
続いて射的屋。
「お兄ちゃんどれ欲しい?」
「選んで」
「え、じゃああのお菓子――」
「「OK」」
エリカとヒカリ、すぐに狙いを定める。今回はどうやら早打ちらしい。二人の間でどうやってルールが決まっているのか、アキナにはよくわからなかった。
パシュ!
エリカの弾が先にお菓子の箱を弾いた。
「はい私の勝ちー! 見たか小娘。これが人生経験の差だよ」
「ぐぬぬぬ……次、はやく次!」
それからも謎の勝負は続いたが、決着はつかず。
「はー、はー……くそ、これで25勝25敗」
「ぜー、ぜー……わからせてやるつもりだったのに」
アキナ、さすがに二人を止めにかかる。
「なぁ、もういいんじゃないか?」
「じゃあさ」
「最後はお兄ちゃんが選んでよ」
「え?」
「「どっちとお祭り回りたいの?」」
「……はい?」
アキナもこれには声を荒げる。
「いやいやいやいや、なんでそうなる!? おかしいだろ!」
だが、エリカとヒカリも負けていない。
「なるもんはなるの!」
「こいつに負けたくないし!」
「三人で回ればいいだろ!」
「それは……なんか嫌!」
「そう! なんか嫌!」
「お前らいい加減にしろ! これ以上争うならもう帰るぞ!」
「それはもっと嫌!」
「同じく!」
「なんなんだよ、もぉー!」
アキナの絶叫は、祭りの喧騒に消えていった。
賑やかな夜はまだ終わりそうにない。
