Short Story

ショートストーリー

■20 《真side》 『自分らしさ』

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作:校條 春

 控室。
 大会が終わってしばらく経ち、出場選手もほぼ帰った。
 最後に残った少女――六王院スズネは椅子に座ってキャラメルを頬張りながら、考え事をしていた。
「……」
 と、そこで控室の扉が開く。
「あれ、残ってる」
 入ってきたのは長身の男――清蔵タイゾウだった。
「ご迷惑でしたか? すぐに出ていきます」
 席を立つスズネを、タイゾウが慌てて止める。
「いやまだ大丈夫だよ! あと30分は開放してるから」
「そうですか」
 スズネ、座りなおすと追加で一つキャラメルをぱくり。
 そのまま少し、静かな時間が続く。
 タイゾウはスズネの様子を見て何を思ったのか、扉に背を預けて話しかけた。
「何か迷ってる?」
「なぜですか?」
「今日のファイト、以前までの正確さというか、有無をいわさない正しさみたいなのがなくなってて、迷走してるように見えたから」
「……そうですね。探しています、私のファイトを」
「見つかりそう?」
「わかりません」
「そっか。意外と難しいよな、自分らしさって」
「あなたにはありますか、自分らしさ」
「うーん、そうだなー」
 タイゾウは少し悩むと、朗らかな笑顔を向ける。
「信念を曲げない、かな」
「信念、ですか」
「俺はさ、欲張りなんだ。欲しいものを手に入れないと気が済まない。俺のファイトにも、そういうところ出ちゃってるんだろうな。『お前は前のめりすぎる』って相棒によく言われるよ」
 タイゾウは苦笑する。
「スズネちゃんにはない? 譲れないものとかさ」
「……」
 スズネはさらに一つ、キャラメルを頬張る。
 もごもごと咀嚼してから、呟く。
「……キャラメルは好きです。譲れないと思います」
「いいじゃん。なら今は、それがスズネちゃんらしさかもね」
「でもファイトと関係ないです」
「そういうのは後からついてくるものだと思うな。まずは一つ一つ見つけていけばいいよ、自分らしさ」
 スズネは無表情のまま、考えを巡らせているようだった。
 そして突然、すっと立ち上がる。
「わかりました。見つけてきます」
「え?」
「加賀に行こうと思います」
 唐突な宣言にびっくりしたタイゾウだったが、スズネの迷いない瞳を見て納得する。
「そこにあるんだ、自分らしさ」
「はい、きっと。友達がいますから」
 スズネは自然に微笑んでそう言うと、失礼します、と頭を下げ、控室を出ていった。
「……若いねぇ」
 背中を見送ってから呟いたタイゾウに、
「お前はもう後輩育成の年長者気取りか?」
 どこからともなく現れたキョウマが釘をさす。
「バカ、俺はキレイな女性はちゃんとエスコートするたちなの」
 ウインクしておちゃらけて見せるタイゾウだったが、冷ややかな目を向けるキョウマに即刻仕事へと連行されていった。

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