■2 《幻side》 『その関係は夢の中』
作:校條 春
喫茶店の窓際に座ったスオウは、ホットミルクコーヒーに口をつけながら、世界の中心に建つ塔を眺めていた。
「スオウ君、早いね」
ホットココアを持って正面に座ったのは、クルミ。
スオウは苦笑する。
「人を待たせるのとか苦手でさ。約束はいつも早く来ちゃうんだ」
「おー。さすが生徒会長」
「それ関係ないから。これは性分」
「そうなの?」
「そうなの」
二人は、ふふ、と笑い合う。
そんな調子で談笑していると、もう一人。
「お前ら早くないか? 俺時間通りだよな」
リュウガはスオウの左に座る。
テーブルに置くのはアイスブラックコーヒー。
「それブラック? リュウガ君おっとなー」
「別にそういうんじゃねぇよ」
スオウ、ぽんと手を叩く。
「あ、ちょっと背伸びしてみたとか? わかるよー、ブラック片手に本とか読んでたら大人っぽくてかっこいいもんなー」
「なんか仕事できそうな感じするよね」
「俺もチャレンジしてみようかな」
二人の同調に呆れるリュウガ。
「お前らなぁ」
スオウ、何かに気づきあっさりと話題を変える。
「ん? ってかリュウガって今、クルミんちの倉庫で寝泊まりしてるよな。なんで別々で来たんだ?」
クルミ、不満そうに声を上げる。
「それがさー。リュウガ君、声かけてもいつも一人でいいって言うんだよ」
「なんで?」
リュウガはスオウの純粋な疑問に目をそらす。
「……いいんだよ、用がない時は一人で。幻真星戦が終われば、現実の記憶をもう一度消して、いつもの日常に戻る。俺たちの関係もそれまでだ。どうでもいいだろ、その間のこととか」
スオウとクルミ、顔を見合わせる。
「俺はどうでもよくないよ」
「うん、私もそう思うかな」
二人の真剣な表情に、リュウガはなぜか言葉を返せなかった。
少しの沈黙の後、スオウは優しく話し出す。
「もちろん、俺たちが集まってるのは他に本当のことを話せる相手がいないからだよ。でも、俺はこの三人で集まれてよかったって思ってる」
クルミも続く。
「いつか……もしかしたら唐突に終わる関係だとしても、今は今で大切にしていいんじゃないかな」
リュウガ、ばつが悪そうに明後日の方向を向く。
「……そうかよ」
スオウは満足そうに笑って、手を叩く。
「じゃあ早速始めるとしますか。第一回、不幸トリオ会議を!」
「おー!」
「……やっぱひでぇネーミングだな」
途中、いく度も脱線を繰り返しながら、会議と称したその雑談は一時間以上に及んだ。
