■19 《幻side》 『嵐のように』
作:校條 春
マサノリは上機嫌だった。
「アメイジング! 幻世界。欲望の果て。禁忌の園。なんて虚しく独善的で……美しい!」
るんるんとスキップするように、誰もいない夜道で踊る。
幻世界の真実。それは今のマサノリにとって何よりも興味の対象であり、興奮するほどの研究材料だった。
「神が実在するのなら、人は縋るか抗うか……ふふふ」
赤い月の光を愛おしそうに見上げて、不気味に笑う。その姿は客観的に見て、非常に近寄りがたい不審者ではあったが――
「神が実在するなら、そいつを超えて頂点に立つ」
一人の女性が、怖気づくことなくマサノリの前に現れる。
「それだけだろ?」
「あなたは……」
「鼎センカだ」
センカはにやりと、好戦的な眼差しを向ける。
「……あなたは神に抗うと?」
「抗うってのは違うな。オレより高いところにいるやつは誰だろうともれなく超える」
「それ、神とか関係なくあなたの趣味の話じゃないですか」
「そうだな。お前わかってるじゃねぇか! クハハハハハ!」
豪快に笑いながら、マサノリの腰辺りをばしばし叩くセンカ。
「痛い。痛い。痛いです」
めんどくさいのに絡まれたと嫌そうな顔をするマサノリ。
「で、私に何か用でも?」
「おう、幻世界とか幻真星戦とかファントムファイターとか、ガブエリウスの話を聞いてもいまいちピンときてなくてな。いい感じで要約してくれるやつを探してたんだよ。お前、ちょっと付き合え」
「え?」
「こい」
襟首をつかまれ、ずるずると引っ張られていくマサノリ。
「だから痛い! 痛いですってぇーーーー!!」
マサノリの悲鳴が夜の町にこだまする。
――ミラージュタワー前。
センカはミラージュ饅頭を頬張りながら頷いている。
「なるほどなぁ」
「はぁ。満足していただけましたか」
幻世界を取り巻く現状について一通りの
「ま、ファイトできるなら何でもいいな!」
わかりきっていた感想に、マサノリは不満を表明する。
「その結論、私を捕まえてまで聞いた意味あります?」
「あるある。ありがとよ、伊勢木マサノリ。おかげでいろいろスッキリした」
「そうですか」
「お礼と言っちゃなんだが、お前はなんかないのか、オレに聞きたいこと」
「いや別に何も……」
「そんなことないだろ! 遠慮すんな!」
またしても、ばしばしと背中を叩く。
マサノリの興味ある事柄について、センカが何か答えを持っているとは到底思えない。でも叩くのはやめてほしい。そこでマサノリは、咄嗟にあることを思いつく。
「では、一つだけ」
「おう」
「神様ってどう思います?」
それはマサノリも考えていた事だった。
センカは一瞬考えた後、笑顔で言い放つ。
「員弁ナオだな!」
あまりにも迷いのない返答に、マサノリは苦笑するしかない。
満足したセンカは「じゃあな!」とまるで嵐のように去っていった。
残されたマサノリは一人、夜空を見上げる。
「イッツクレイジー……」
