Short Story

ショートストーリー

■18 《真side》 『いざないの川釣り』

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作:校條 春

 昼下がり。
 カゲツは近所の川で釣りをしていた。
 いつも通りの穏やかな時間。
 町中の喧騒から外れ、聞こえるのは自然の音だけ――
「釣れないね」
 のはずだったが、今日は違った。
 カゲツの隣で同じく釣りをしているのは、ジンキである。
「いや、なんで?」
「釣りをするのに理由が必要かい?」
「釣りの方じゃなくて、何でここにいるのか聞いてるんだ」
「いいじゃないか」
「何かあるだろ、絶対」
 ジンキは少し黙ると、笑顔で釣り糸の先を見たまま、世間話でもするかのように話し出す。
「プロファイターに戻るつもりはないかい?」
「ない」
 即答だった。
 しかし、ジンキは引き下がらない。
「望むならチームを紹介しよう!」
「無理だ」
「またミチルと切磋琢磨できるよ!」
「ダメだ」
 お互い一歩も譲らない。
「意思は固いようだね。どうしてかな?」
「単純だよ。もうプロってやつに魅力を感じてない、それだけだ。あんたこそ、なんで俺にプロやらせたいんだ?」
 ジンキは待ってましたと言わんばかりに大仰な仕草で演説を始めた。
「それこそ単純な話さ! ヴァンガード界は間違いなく過去最高に盛り上がる! 廻間ミチルが復活し、狐芝ライカ、六王院スズネ、鼎センカを筆頭に新人もすばらしい活躍を見せている。そこにあの! 『現役時代無敗』という伝説を作った、八雲カゲツが復帰したら……ああ! 想像しただけでも興奮して倒れてしまいそうだ! そんな未来を俺は見たい!」
「大げさなんだよ。言う程盛り上がらないぞ、きっと」
「自分を過小評価しすぎだね。人は興奮した瞬間を一生忘れない。あなたはそれほどの偉業を成したんだ」
「はぁ。あんた、俺を客寄せか何かだと思ってるだろ」
「思ってないと言えば嘘になるかな」
「正直だなおい」
「でも誤解しないでほしい。決して金や名声のためじゃない。純粋に、ヴァンガード界の未来を思ってのことだよ」
「そうかよ」
「もちろん無理強いする気もない――」
 と、そこでジンキの釣り竿が軋む。
「フィッシュ!」
 釣り竿を引き上げると、立派な魚が釣り上がった。
 ジンキは釣り針を取り、その魚をすぐに川へと返す。
「俺はね、魚は釣っても、その後は自由に泳ぎ回ってほしいと思ってるんだ」
 そう言うと、満足そうな顔で釣り竿をしまう。
「今日はこれまでとしよう」
「今日は、って。また来る気か?」
「諦めは悪い方でね」
「答えは変わらないぞ」
「何度でも釣りに来るさ」

 ジンキが去った後も、カゲツは釣りを続けた。
 しかし結局、今日の釣果は0だった。

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