■14 《真side》 『その出会いは(前編)』
作:校條 春
それは、まだクルミとカナミが中学生の頃。
カナミが病室を訪れると、クルミはいつになくご機嫌だった。
「姉貴、何かいいことでもあった?」
「うーん、まぁねー」
にやけ顔が隠しきれていない。
その笑顔を見ていたらカナミも嬉しくなる。こんなに心の底から嬉しそうなクルミを、カナミは久しく見ていなかった。
「え、なになに、教えてよー!」
「どうしよっかなー」
「姉貴、まさか宝くじで一等を……」
「なんでそうなるの!」
小ボケに全力でツッコんでくる。
このことからも、クルミのテンションが高いことがわかる。
「じゃあなんだよー」
「ヒントを差し上げます」
「もったいぶる気満々だ……」
「生活に彩りを与えるものです」
「うーん、おいしいものを食べたとか?」
「ぶっぶー。はぁ、カナちゃん単純すぎるよ」
やれやれと首を振るクルミ。
「なんで私が変みたいになってんだ! 情報少なすぎるだろ!」
今度はカナミが全力でツッコむ。
「なら次のヒントね。ドキドキワクワクするって感じです」
「面白いミステリー小説の続編が出たとか! ほら、この前姉貴が貸してくれた、双子入れ替えトリックのやつ!」
「ぶっぶー」
「ドキドキワクワクしたんだけどなぁ」
「それには同意」
「だろ?」
「でも違いまーす」
「ぐぬぬ、今日の姉貴、なんかめんどくさい」
「えへへ」
「褒めてないからな」
「いいもーん」
「開き直った!? もうちょっとヒントくれよー!」
クルミは、ふふ、と笑い人差し指を立てる。
「では最後のヒントです」
「よしこい……」
身構えるカナミ。
「心を温かくする、出会いです」
ゆっくりと言葉を発したクルミの表情は、本当に本当に幸せそうで、カナミは思わず息を飲んだ。
そして、自然にあることを思いつく。
「……もしかして、友達ができた?」
「せいかーい♪」
クルミの声が弾んでいる。
カナミは思わず身を乗り出す。
「え、誰誰!? どこで知り合ったの!? 年齢は!? 性別は!? ご趣味は!? お住まいは!?」
「もうカナちゃんってば焦りすぎ。ちゃんと話すから」
「ご、ごめんつい」
クルミは脳裏に焼き付いた、楽しい時間を思い出す。
「病院の中で出会ったんだよ。同い年の男の子とその妹ちゃんの二人でね、私と同じで妹ちゃんが入退院を繰り返してるんだって。それでねそれでね――」
宝物を見つけた冒険家のように、遊具で遊ぶ子供のように、初めて魔法が成功した魔法使いのように、二人のことを話すクルミの笑顔は眩しかった。
カナミはただただその笑顔が、たまらなく嬉しかった。
「今度、カナちゃんにも紹介するね」
「うん、絶対だよ!」
二人は約束をして笑い合う。
新たな出会いに、幸せな未来を、夢見て。
