Short Story

ショートストーリー

■10《幻side》 『王の苦悩』

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作:校條 春

 幻真星戦を開始するより少し前。ガブエリウスは、ミラージュタワーの玉座にて、眉根にしわを寄せていた。
「はぁ」
 ファントムファイターとして選ばれた者たちに状況を説明し、理想の世界について聴取するため、幻創カードで作り出した分身を使って回っていたのだが――

 伏見リュウガの場合。
「ああ? 理想の世界に望むこと? んなもん一つだけだ。この忌まわしい現実の記憶を消せ。できないというなら、俺が幻創カードを奪ってやる」

 呼続スオウの場合。
「うーん、望むことかぁ。あ、クオンとクレイにいくから、とにかくお金は欲しい。いくら必要なんだ……? とりあえず大金持ちだな。石油王でもいいぞ」

 大倉メグミの場合。
「そうですねぇ。最近大倉家に噛みつく方もすっかり減ってしまったので、いい感じの敵はほしいです。とても潰しがいがあって、何度跪かせても立ち上がってくるような、最高のおもちゃがあると嬉しいのですが」

 黒崎キョウマの場合。
「タイゾウの足を引っ張る奴は全て消せ。以上だ」

 狐芝ライカの場合。
「そんなもんねぇよ。失せろ」

 その後も回り続けたが、ファントムファイターの面々はくせ者ばかりだった。
「はぁ」
 もう一度、大きなため息をつく。
「理想の世界とは、難しいものだな」
 全ての願いを叶えることが出来るのか。
 幻創カードにはどれほどの力があるのか。
 まだガブエリウスにもわからないことだらけだ。
 確かな使命感とぼんやりとした不安の中、ガブエリウスは目を閉じる。瞼の裏に浮かぶのは、遠い日の記憶。家族や仲間たちに囲まれ、未来に希望を抱いていたころ。

『おまえは師の教えに従い、よく励んだ』『見事ですな、族長のご子息』『大した器だ』『いずれも大事なのは実践』『ガブエリウス、お前ならできる』『あなたを生んだことこそが私たちの誇り』

 浮かぶ言葉の数々は、いったい誰の言葉だったか。
 ガブエリウスはそっと目を開ける。
 たとえ進む道が一族の……母上の願いと違っていようとも。幻創カードを手に入れ、己が欲望に手を伸ばし、彼らの願いも聞いてしまった今、もう止まれない。

 別れ際の、ファントムファイターたちの言葉を思い出す。
「お前を信じるぞ」
「俺たちの願い、一緒に背負ってくれるんだろ」
「あなたと共に戦いましょう」
「世界の行路はお前に任せる」
「……俺の証明が済むまでは、この世界を維持してみせろ」

 ガブエリウスは一人、呟く。
「……やるしか、ない」

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