Short Story

ショートストーリー

■1 《真side》 『世界征服のスイーツ』

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作:校條 春

 清蔵グループ金澤支社。
 時刻は夜の9時を回ろうかと言う頃。
 エリカが所用を終え廊下を歩いていると、休憩室の明かりが点いていることに気づく。一応と思いながら中を確認すると、目の前に広がっていた光景に目を丸くする。
「……いたんですか」
「ああ、明星か」
 キョウマだった。
 ただ、エリカが驚いたのはそこではない。
 彼の目の前には、巨大なパフェがあった。
「なにやってるんです?」
「バカ社長の無茶で今夜も長そうなのでな。少し休憩している」
「パフェ、好きなんですか?」
「甘いもの全般好きだな。仕事で踏ん張りたい時は、気合を入れるために、なるべく高いやつを摂るようにしてる」
 意外な一面に、エリカは思わず笑ってしまう。
 キョウマは、そんなにおかしいか? と首をひねる。
「だって、不思議な組み合わせだから」
「……君は、甘いもの好きか?」
「はい、大好きです」
 キョウマは冷蔵庫を開けると、中のものをエリカに差し出した。
 かぼちゃプリンだ。
「一緒にどうだ? 取引先でも評判のやつなんだが」
「おお! やったぁ!」
 エリカはついテンションが上がり、いつもの調子がでてしまう。
「……いただきます」
 すぐに冷静になり、恥ずかしそうに顔を赤くする。
 と、そこに割り込む、二人にとっては聞きなれた声。
「お前ら、この俺を差し置いてスイーツパーティーとはずるいんじゃないか?」
 タイゾウが休憩室に入ってきた。
 キョウマは一切表情を崩さず、彼の言葉に抗議する。
「こっちはお前のわがままに付き合うために残ってるんだ。これぐらいの自由はあって然るべきだろう」
「私は、キョウマさんに誘われただけです」
「んじゃ俺もー」
 タイゾウはるんるんと冷蔵庫からかぼちゃプリンを取り出すと、二人の前で高く掲げた。
「仕事の成功を祈って! かんぱーい!」
 二人、真顔で見ている。
「いや、どうしたお前ら。元気がないぞ」
「お前がどうした」
「急すぎてちょっと」
 タイゾウは屈託なくニカっと笑う。
「お前らがスイーツで心の栄養補給するように、俺は社員の笑顔で栄養補給してんの。俺のためと思って、付き合ってくれよ」
「……まったくお前と言うやつは」
 キョウマはしぶしぶパフェを掲げる。
「キョウマさん、それ大きすぎ」
 エリカものっかり、かぼちゃプリンを掲げる。
 満足そうなタイゾウの声が響く。
「それじゃ改めまして。我が社の世界征服のために!」
「かんぱーい!」「かんぱい!」「かんぱい」

「というか、仕事って世界征服なんですか?」
「そんなわけあるか。こいつの世迷言を真に受けるな」
「いいじゃん世界征服! 夢はでっかく、野望は広く」
「広すぎだ」

 三人の他愛ない休憩は、もう少しだけ続いた。

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